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脱税摘発の現場から

実際の相談事例や体験をもとに、税務調査の実態や税制の抜け穴、立会いの仕方等を、山根治公認会計士・税理士が解説。税理士必見!
 【解説】山根治公認会計士・税理士

【第一部】脱税摘発の現場から

5. 税制の抜け穴 (2010-10-05)

 これまで私は、脱税事件において冤罪がしばしば見受けられる原因として次の3つ、即ち、

  1. 司法制度におけるチェック機能の不全
  2. 税務職員の調査能力の劣化・職業倫理の欠如と、国家公務員の無責任体制
  3. いびつな税理士制度
を挙げ、中でもとくに問題なのは3.のいびつな税理士制度であり、税理士制度には2つの欠陥があることを指摘した。税理士会への強制加入制と税理士業務の無償独占性の2つである。この2つは単なる欠陥であるにとどまらず、納税者に多大な害悪を及ぼすガンであると述べ、2つとも直ちに廃止すべきであると論じてきた。

 たしかに、この2つのガンが取り除かれるならば、納税者の権利擁護の観点からは望ましいことだ。この2つに絞ってでも、できるだけ早く税理士制度の見直しがなされるべきである。

 では、この2つのガンが取り除かれることなく居座っている限り、納税者あるいは税理士としては手を拱(こまぬ)いているほか、なすすべがないであろうか。傍若無人の振る舞いをする税務当局に屈し、税務当局の下請けに堕している税理士に頼るしか他に方法がないのであろうか。

 あるいは、がんじがらめに縛られている税理士は、誇りある職業会計人としての信念を押し通し、憲法で保障されている納税者の権利を擁護することができないのであろうか。

 窮すれば通ずという。あるいは窮鼠猫を食(は)むともいう。納税者の義務(納税義務)に重点を置き、納税者の権利については一部形式的に定めるのみで、ほとんど蔑(ないがし)ろにしてきた日本の税制にあって、一つだけ抜け道があったのである。

 この50年にわたって、税理士法を含む日本の税制は、大蔵省(現在は財務省)と自民党の税制調査会の意のままに構築されてきた。しかも、自民党の税制調査会は、インナーと称する一握りのボス的存在によって牛耳られ、その結果、世界でも類を見ない複雑怪奇な税制に仕上がった。この人達は、納税者の権利などほとんど省みることなく、しかも、徴税にあたって文句をつける者が入り込む余地をふさいだ上で、取りやすいところから税金をとるために、膨大な量の法律を作ってきた。それに伴う、施行令、規則、通達、コンメンタールに至っては気が遠くなるほどの量である。しかも法文の難解さは他に類を見ないものであり、専門の税理士でさえ持て余し気味である。

 自民党から民主党に政権が移行して一年、納税者の権利に関しては基本的に全く変っていない。

 複雑怪奇な税制。とても素人の手に負えるシロモノではない。いきおい専門家に頼ることになる。国は、税金の専門家を税理士に限定し、税理士でなければ税金の仕事をしてはいけないと法律で定めた。税理士法である。

 この税理士法、徴税側からすれば、極めて使い勝手のいいものだ。国民に文句をつけられることなく、できるだけスムーズに必要な税収を確保するために作り上げられた法律であると言ってよい。7万人の税理士は国税庁の下請け機関、いわば別働隊として位置づけられており、税理士としては納税者のために働こうと思っても思ったようにはできないように税理士法によって仕組まれている。

 しかし、上手(じょうず)の手から水が漏れるように、一つだけ抜け穴があった。税理士の存在を有名無実のものとし、納税者の権利については封印しようとした税理士法ではあるが、納税者が自らの権利を主張するための礎(いしずえ)が一つだけ残されていた。いわば、税制の抜け穴であり抜け道である。


(1) 税制の抜け穴とは

 税制の抜け穴。7万人の税理士を巧みに利用して、納税者の権利を事実上剥奪している税理士法、この悪法に存在する意外な抜け穴とは何か。上手(じょうず)の手から水を漏らした穴とは一体何か。

 ズバリ、税務調査の立会いの規定が欠けていることである。税務調査の立会いとは、第三者が税務調査の現場に臨席して税務調査をしっかりと見届けることであるが、これについての定めがないのである。

 納税者は通常、決算書などの基礎資料を作成して、それをもとに税務書類(税務申告書など)の作成を行なう。基礎資料を作成するまでの相談(税務相談)を受けたり、税務書類を作成(税務書類の作成)したり、納税者の代理人となったり(税務代理)するのが税理士であり、この3つの事務の独占権を持っている。既に述べたところである

 申告納税制度を採用している我が国においては、払うべき税金は納税者自らが計算をして納税する建前になっている。

 しかし、これで終りではない。税務当局のチェックが待っているからだ。申告内容が正しいかどうかについてのチェックである。納税者に対して行なう調査、税務調査である。

 税務調査は強力な権限である質問検査権にもとづいて行なわれる。この権限はそれぞれの税法に規定されているものであり(法人税法第153条、所得税法第234条、相続税法第60条)、納税者としては「正当な理由がある場合」を除き拒否することができない。一般の税務調査が任意調査であるにも拘らず、納税者としては拒絶することができず調査を受ける義務(受忍義務)があることから間接強制と称されている所以(ゆえん)である。

 つまり、納税者としては税務調査などのチェックを受けて申告が正しいものと認定されるまでは終ったことにはならないのである。この意味からすれば、納税者にとって最も関心のあることは、申告した内容がそのまま認められる(是認)かどうかであり、税務調査がなされる場合にはどのようなことがらについて、どのような調査がなされ、税務当局によってどのような判断がなされるかということだ。

 ところが、納税者にとっての最大の関心事ともいうべき税務調査については法的整備がなされていないのが現実だ。納税者の立場を無視したトンデモない税務調査が横行しているのは、納税者の権利を擁護すべき法的整備が欠けているからであり、税務当局の勝手気儘な裁量に任されているからだ。

 税理士法においても、税務調査に関しては一部間接的に触れられているだけであり、真正面から取り上げられてはいない。関連する条項はわずかに、税理士は税務調査に関して納税者の主張あるいは陳述について代理することができること(税理士法第2条)、税理士は税務職員と面接するときは税理士証票を提示すること(同第32条)、税務職員は税務調査を行なうにあたって、納税者に対して必ずしも事前に知らせる(事前通知)必要はないが、仮に事前通知をした場合には代理人である税理士にも通知すること(同第34条)、この3つ位のものだ。税務当局としては、できることなら自分達だけで調査を行ない、第三者の干渉を受けたくないといった思惑が透けて見えるようである。

 このためであろうか、税理士法には税務調査の立会いについての規定が全く存在しない。そもそも立会いそのものが税理士業務とはされていないのである。立会いを税理士業務の中に組み込み、税理士の立会権を真正面から認めてしまうと、税務調査そのものがやりづらいものとなるおそれがあることから敢えて外してあるものと思われる。


(2) 抜け穴としての「税務調査の立会い」

 本来ならば税理士の最も重要な仕事であるべき税務調査の立会いが、税理士の独占業務である「税理士業務」(税理士法第2条)から外されている-、これは多分に徴税側の都合によるものだ。

 ところがよく考えてみると皮肉なことに、このことは納税者と税理士にとってはマイナスになるどころか、逆にプラスに働くことが判明する。税務調査の立会いが税理士業務ではないということであれば、税務調査の立会いを業務として行なったとしても、税理士法のシバリを全く受けないことになるからだ。

 税理士法の規定にしばられない、-税理士にとっては極めて大きな意味を持つことだ。たとえば、スパイもどきの行為を強要される(税理士法41条の3、助言義務。同41条、帳簿作成の義務。同55条、監督上の措置)ことはないし、財務大臣が行なう懲戒処分(税理士法第44条以下)とか、罰則(同法第58条以下)の対象になることもない。当然のことながら、ゲー・ペー・ウー(秘密警察)の役割を担っている税理士会・日本税理士会連合会が介入することもできないのである。

 立会いが税理士業務でないとすれば、理屈の上では税理士ではない一般の人でもできるのであるが、現実問題としては税理士に限定される。というのも、立会いといっても単に傍らで見守るだけでは不十分であり、納税者のために税務職員と交渉しなければならないからであり、この交渉となると、「税務官公署の調査・・・に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述」(同法第2条第1項一)に該当することとなり、独占事務である税務代理となるからだ。

 これでは立会いも、事実上税理士法にしばられてしまうのではないかといった意見が出てくるかもしれない。たしかに、税務調査のときに納税者に替わって主張したり、陳述したりすることは税理士でなければできないし、税理士業務を行なう限り税理士法にしばられる。この点に限って言えばその通りである。

 しかし、そもそも立会いは納税者が税務申告を終えてから後のものであることに留意する必要がある。納税者は正しい申告をしているという立場であるのに対して、疑いの目をもって粗(あら)探しをするのが税務調査であるとするならば、立会人としては、すでに提出された税務申告について、納税者の弁護人の役割を担うと同時に、「公正な立場」(税理士法第一条)の第三者としていわば裁判官の役割を担うことになる。

 申告が間違っているというのであれば、国税当局がそれを証明しなければならない。つまり、立証責任は国税側にあるわけで、立会人としては国税側の言い分に耳を傾け、その是非について判断すればいいだけのことである。申告が間違いであるというのであれば、それを立証する立場にあるのはあくまで国税側である。納税者あるいは代理人である立会人は申告内容が正しいことを敢えて証明する必要がないということだ。その点、立会人としては、気楽な高見の見物といったところである。

 立会い、あるいは立会人の役割は以上のとおりではあるが、立会人が納税者の顧問をしていたり、あるいは申告書を作成し、申告の代理人になっている場合には、税理士法のしばり(助言義務、帳簿作成の義務、監督上の措置、懲戒処分、罰則等)が復活し、高見の見物どころか、税理士にとってはなんとも鬱陶しいことが生じてくる。


(3) 税務調査の立会いにおける留意点

 税理士が納税者の顧問をしていたり、あるいは税務申告書を作成し、申告の代理人になっていることが、調査立会いにどのように影響するのであろうか。立会い自体は税理士業務ではないにも拘らず、納税者に何らかの関与をしていたことによって、立会いについても税理士法に事実上しばられることになるとは、一体何を意味するのか。

 調査によって何も非違(脱税)事項が出てこなければ、勿論問題は出てこない。税理士にとって鬱陶しいことが起るのは非違事項が出てきた時、あるいは、税務職員が非違事項であると頑(かたく)なに思い込んでいる時である。

 仮に出てきた場合には、署名をした税理士の責任が問題となり、税務職員に痛くもない腹をさぐられたり、更には税理士法をタテに恫喝されかねない。その挙句、業務停止とか資格抹消だけならまだしも、脱税の片棒をかついだとして刑事罰に問われ、逮捕されることもあり得るのだ。納税者とグルになって税金をゴマかしていると勘ぐられたりしたら、公正な裁判官としての役割はおろか、弁護人としての役割すら果せなくなってしまう。ヘビににらまれたカエルのように、身動きができなくなり、自分のことで精一杯で納税者のことなど考えている余裕がなくなり、ひたすら税務当局に迎合せざるを得なくなってしまう。税理士が自らを守るために、税務当局の替りになんとか納税者を説得して、支払う必要のない税金を納税者に強いることにもなりかねない。国税OBの税理士に多く見受けられるところである。

 このようなことは、立会いが、それ以前に行なった税理士業務を引きずっているために起ることだ。

 脱税の相談に乗ったり、脱税の指導をするような不心得な税理士は、仮にいたとしてもごくわずかであろう。税理士本人はもちろんのこと納税者にとってもリスクが余りにも大きすぎるからだ。従ってほとんどの税理士はそのような、割に合わない汚れ仕事に手を貸すことはない。当然のことである。

 しかし、そのような不正に手を貸した事実がないにも拘らず、納税者と一緒になって脱税をしていると思い込まれでもしたら大変だ。とくに、納税者が苦しまぎれに税理士に脱税の相談をしたとか、税理士の指導を受けたなどと供述でもしたら悲惨なことになる。逮捕され訴追された名古屋の税理士のケースは、税理士にとって決して他人事ではないのである。

 ただし、通常の税務調査の場合には以上のような問題はまず起らない。大半の税務調査は、概ね任意調査の趣旨にのっとって行なわれ、初めから脱税であると決めつけるような乱暴なことはしないからだ。従って、このような問題が現実となるのは脱税の摘発を目的にしている資料調査課による調査(料調)のときである。事前調査(内偵)によって勝手なストーリーを創り上げ、脱税をしているという思い込みを前提として調査が開始されるからだ。料調自体、法律の規定にはないものであり、違法とも言える調査ではあるが、全国的に横行しているのが現実だ。

 では、料調に直面して以上のような事態が予測される場合に、納税者も関与税理士もなすすべがないであろうか。料調のペースにのって、脅かされるままに理不尽なことにでも屈服しなければならないであろうか。


(4) 「月次顧問税理士」と「立会い専門税理士」の併用

 税理士が調査の立会いをするにあたって、税務当局、とりわけ料調に対して対等な立場で対峙するためにはどうしたらいいか。納税者が料調に直面したとき、税理士に十分な能力を発揮してもらうためにはどうしたらいいか。

 答は簡単だ。税理士を替えることである。なにも従来の顧問契約まで解除することはない。ただ調査の立会いだけを別の税理士に頼めばいいのである。納税者の代理人が一人多くなるだけのことだ。手続き的には新しい代理人の届けを税務当局に出せばよい。

 効果は歴然としている。新しく代理人となった税理士は、調査の対象となる過去の期間は納税者とは赤の他人であり、申告内容については全く関与していないだけに白紙状態だ。このことは、過去の申告について税理士法上の責任が全くないことを意味する。税理士法による縛りがないということだ。そのために国税当局に対する気がねが不要となり、本来の税理士として「公正な立場」(税理士法第一条)に立って、職業会計人としての誇りと信念とをもって、対等な立場で国税当局と交渉することができるのである。いわば、悪法である税理士法を逆手に取り、骨抜きにするということだ。抜け穴と称する所以(ゆえん)である。

 私はこれまでいわば“助っ人”として、かなりの数の料調の立会いを経験している。東京、関東信越、名古屋、大阪、広島の各国税局で、税目も法人税、所得税、相続税にわたり、業種も様々である。

 それらのほとんどは、顧問税理士が料調に脅し上げられて調査の立会いを放り投げてしまったケースであった。中には顧問税理士と話し合って、お互いの役割を分担して立会いに臨んだケースもあった。

 これまで述べてきたように、査察にせよ、料調にせよ、顧問税理士が後難をおそれて触らぬ神に祟りなしとばかりに逃げ出すのはよくあることだ。このような場合、税理士が無責任だとか、意気地がないと言って一概に批難することは酷(こく)であろう。むしろ、今の税理士法のもとではやむをえない対応であり、顧問税理士としては賢明な措置であるとさえ言えるものだ。自分でなんとか事態を打開しようともがいた挙句、国税側の手先のようになって、納税者に無用の犠牲を強いることになるよりははるかにましである。

 料調の調査が開始されたら直ちに、他の税理士に立会いのバトンタッチをすること、-納税者のためだけでなく、顧問税理士の利益にもつながることだ。

 これまでは、税理士が面子(めんつ)に拘ったり、あるいは自分の仕事を後生大事に守ることに気をとられるあまり、他の税理士に“助っ人”を求めることなど考えもしなかったのではないか。厄介払いをするかのようにコソコソと逃げ出したり、あるいは、できもしないことを無理をしてまでしようとしないで、信頼の置ける税理士に立会いを頼み、共同作戦を展開してキチンと問題を解決すれば、従前通りの顧問契約を維持することが可能であるばかりか、納税者からの信頼度はかえって深まることになるはずだ。いわば複数の税理士による共同作戦である。

 要は、税理士の仕事をするにあたって、どこに目を向けるかである。納税者のことを常に念頭に置いている限り、本当の意味で納税者をサポートする方策は自(おの)ずから出てくるはずだ。

 違法ともいえる料調に対抗することは、税理士法の縛りがある限り至難のワザである。

 仮装・隠ぺいの事実がないにも拘らず、いとも簡単に仮装・隠ぺいの認定を行ない、懲罰的な意味合いのある重加算税をふっかける。青色申告を取り消して、理由をつけないで更正したり、安易に推計課税を行なう。これらは、金額によっては直ちに刑事告訴につながりかねないオソロシイものだ。税金さえ払えば済む問題ではないのである(参考『ハニックス工業 事件の真相』)。

 このような料調のやりたい放題の乱暴なやり方を厳しくチェックすることこそ、税理士に与えられた本来の役割であり、そのような役割を全うするには、悪法である税理士法の縛りを断ち切り、国税当局に従属せざるをえない立場を脱して、対等な立場を取り戻すことが先決である

(第一部 終了)


»「6. 恐さの正体」へ続く


目次

【第一部】脱税摘発の現場から
1. 暴力装置としての徴税権力(2010-10-05)
2. 最近の相談事例(2010-10-05)
3. 隠れマルサ-料調の実態(2010-10-05)
4. 脱税・冤罪事件の3つの原因(2010-10-05)
5. 税制の抜け穴(2010-10-05)

【第二部】税務署なんて恐くない!
6. 恐さの正体(2011-01-25)
7. 税務調査の立会い1(2011-01-25)
8. 税務調査の立会い2(2011-01-25)


※「間違いだらけの税務調査」のご利用にあたっては、必ず注意事項をお読み下さい。

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